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07'01(Sat) 悲恋歌④―3
「・・・っ、何言ってらっしゃるの??私は優駿様・・・」

「それがどうかしたのか??」

澪夜は己の両肩を掴む西園寺に警戒の視線を向ける。
西園寺は澪夜に表情だけの笑顔を見せると彼女の耳元に口元を近づける。

澪夜はこそばゆさと不快で肩を竦める。

「・・・言っただろう・・・??そんなこと、俺には関係ないと・・・」

そう言った西園寺に澪夜はハッと大きな瞳をさらに開いてすぐ近くにある西園寺の顔を見る。
澪夜の満更でもなさそうな表情を見つめる西園寺は未だに冷酷な笑顔のまま。

「・・・でもあ」

「お前・・・最近宮嬢のガキ以外の男に抱かれてないからって調子に乗るなよ??今までお前を求めてきた奴等はお前と、宮嬢のガキの関係を知り宮嬢の家がお前の後ろについているのが怖くなった。」

華族でも上位の地位にある宮嬢の力は恐ろしいからな・・・
西園寺は皮肉に笑みを零してそう言った。

「だが俺は宮嬢なんか怖くない、俺もそれなりの地位がある。宮嬢の存在を知ってお前から逃げていった奴等とは・・・違うんだ。」

笑顔のままそう言った西園寺からは言い知れぬほどの恐怖を感じた。
まるでその恐怖が蛇のように澪夜に纏わりつき、澪夜は息を飲む。

彼女の背筋に冷たい電撃と冷や汗が流れる。

西園寺はそんな彼女の顎をくいっと持ち上げる。

「お前・・・遊女だろ?花魁じゃないのか・・・??」

次の瞬間、西園寺が冷酷な表情になる。
その瞳はとても冷たく、澪夜はその瞳に捕らえられてしまったかのように動けなくなってしまう。

「遊女は客に身体を売って生きている、この世で1番汚らわしい存在だろう??」

「ちが・・・」

「何が違うんだ??お前等は快楽に溺れてるそれなしじゃ生きていけない憐れな人間だろう・・・??」

「ちがう・・・」

西園寺の言葉に澪夜は首を振って抵抗しようとするも西園寺に顎を持ち上げられそれが出来ない。
彼女の抵抗の言葉はか弱く、小さい。

「・・・そんなお前が、馬鹿みたいに幸せにあんなガキに恋焦がれてるのを見ていたら・・・ムカつくんだよ・・・壊したくなるんだよ・・・」

彼の言葉に澪夜は静かに涙を流した。

―――優駿・・・

心の中で、彼の名前を呼びながら、目の前の男に身体を倒されていった・・・


* * * * * * * *


「あら、優駿はん来なさったんか??」

「ええ・・・いつも通り澪・・・椿に会いたくて・・・」

澪夜がいる、艶やかで綺麗な飾りが他の店とは違う高級感をだしているこの街で1番大きな店の前に来た優駿は、澪夜と同じ店の遊女に声を掛けられた。

「あんさんも椿にどっぷりにならはってるんやね・・・」

遊女はそう言うと少し着崩された着物の袖で口元を隠しながら優駿に微笑んだ。
図星を突かれた優駿は頬を弱冠赤らめる。

「・・・あれ?貴方・・・」

店からもう1人の遊女がひょこんと姿をだす。
彼女は優駿を見てきょとんとした表情を見せる。

「・・・どないしたん??」

優駿と話していた遊女がきょとん顔の遊女の顔を覗きこむ。

「いえ・・・今さっきくらいかな・・・椿の部屋にお客が入って行ったから、優駿さんかな・・・って・・・でもなんだか違うみたいですね・・・」

その言葉を聞いた優駿は胸が大きく脈打つ感覚に襲われる。

・・・まさか・・・

「・・・ッ!!」

優駿は慌てて店の中へと入っていく。

彼の頭のなかで嫌な予感が過ぎる。
不安で頭がいっぱいになる、そうでないことを願う。

彼の足取りは速くなった。

取り残された遊女2人がそんな優駿の後ろ姿を見つめていた。

「・・・私、余計なこと言った??」

「・・・さぁ?どないやろうか・・・」

「・・・あれ・・・??」

遊女の1人がふと空を見上げると小さく声を漏らした。



「今日は月が赤いんだね・・・」

彼女の目の先には、真っ暗闇の空に浮かぶ大きな赤い月が妖しく浮かんでいた。





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04'24(Mon) 悲恋歌④―2
予告していた通り、第4廻は折檻暴行ネタがついてくる予定です。
申し訳ありませんが苦手な方は閲覧を控えてください。






外が暁から夕闇に変わろうとしている。

優駿は革靴の音を立てながら螺旋階段を下りると、そのまま玄関に大きな扉のドアノブに手をかけようと腕を伸ばす。

「こんな時間からどこへ行こうとしているんだ、不良息子が・・・」

優駿は背後から響いてくるその声に伸ばしていた腕をぴたりと制止させ、声の方へと振り返る。
優駿の視線が螺旋階段に佇んでいる男を捕らえた。
彼はその男に冷たい視線を送る。

「・・・別に・・・貴方には関係のないことですよ。」

優駿は男から視線を外して皮肉な言葉を男に浴びせる。
優駿の言葉に男は小さく鼻で笑った。

「ふん・・・それが父親に言う言葉か・・・??」

「・・・はい・・・」

「・・・」

「・・・それに人の事不良などと言えますか??貴方こそ今頃になってどうしたんですか??その大きな荷物・・・」

優駿の目線の先にいる男・・・もとい彼の父親はネクタイをきっちり締めて、横には大きなトランクが置かれてあった。
確かにいかにも外出するような風貌だ。

「あぁ・・・今から英国(イギリス)に行って来る・・・また長い時間家を空けるぞ。」

父親の問いかけに優駿は頷きも相槌もしなかった。
彼の父親が家を空けるのはそう珍しい事ではなかった。
むしろ家の中にいる方が珍しいことだった。

「・・・」

「お前も来るか・・・母さんの父親の故郷だ。お前が顔見せればお爺様もさぞかし喜ぶぞ・・・」

「・・・いや、俺は行きませんよ・・・」

いくら英国人の祖父に会いにいけても、この人と一緒に海へ渡りたくない。優駿はそう考えていた。
彼の父親も優駿の返答を分かりきっていたのか、彼の答えに寂しがる事もなく怒る事もなく小さく頷くだけだった。

「・・・まぁ、お前もこの由緒ある宮嬢家の立派な跡取りだ。私の留守の時は出しゃばった行動だけはするな・・・お前の行動次第では宮嬢家の名に泥が塗られてしまう。、そういう事だけはやめろ・・・いいな??」

「別に貴方に迷惑かけるようなしないつもりですけど・・・??」

彼の言葉に優駿は口を硬くする。
暫らく冷たい空気が2人の間を満たし、両者の睨み合いが続いた。

「・・・その反抗的な目・・・いいぞ・・・」

「・・・は・・・!?!」

沈黙を破った父親のその言葉に優駿は瞳を丸くさせる。
そんな優駿の吃驚した表情を見た父親は片手で顎を擦りながら、未だに息子を楽しげに眺めていた。

「・・・・何なんですか・・・貴方という人は・・・気味が悪い・・・」

「その瞳・・・流石は宮嬢の家の者だけある・・・お前は私のように立派に宮嬢を引っ張っていけるぞ・・・??」

「・・・一言二言目には”宮嬢、宮嬢”って・・・よく開きませんね・・・」

優駿はクツクツと笑う父親に冷たい視線を向けると、大きく溜息を吐いた。
馬鹿らしい・・・優駿は小さく呟くと再びドアノブに腕を伸ばして、扉を開こうとする。

「・・・西之谷家の佐和子のことも大切にしてやりなさい・・・」

いきなり投げかけられた父親の突然の言葉に優駿の動きが硬くなり、止まった。
そして瞳だけを父親に向ける。

「・・・何ですか・・・??」

「知らないとでも思ったのか・・・?最近佐和子以外の女と寝てるだろう・・・??」

父親はそう言うとトランクを持ちながら螺旋階段を何段か下りて行く。
優駿は分かり切ったようにうっすらと笑みを浮かべている父親を冷たく睨みつける。

「・・・」

「・・・また”貴方には関係ない”・・・そうだろう・・・??」

父親の言葉が優駿の心を突く。
図星だった。

「彼女以外の女とは好きにすればいい・・・だがな、佐和子は仮にも宮嬢の嫁に来る者だ・・・外面でもいい、大切にしてやれ・・・」

「・・・それじゃぁ彼女が可哀想じゃありませんか??」

「ふっ・・・よくそういう事が言えるのだな・・・現にお前が1番佐和子を哀しませることをしているんじゃないのか・・・??」

「・・・」

父親の言葉に優駿は成す言葉を失う。
また図星を突かれてしまった。

「・・・彼女、佐和子さん以上に愛しているものを愛するのはいけない事なんでしょうか・・・??」

「そう言っているわけではない・・・ただ、佐和子だけには哀しい想いをさせるなと言っているだけだ・・・」

「・・・貴方の言っている意味が分かりませんよ・・・」

優駿は父親に冷たい視線を送り、深く溜息を吐くと握ったままのドアノブに手を押して鈍い音を立てながら扉を開いていく。
そして一歩外へと踏み出す。

「・・・優駿・・・」

その時後ろからまた父親に呼び止められたものの、優駿は身体を静止させただけで、視線は父親の方には向けなかった。

「・・・今日は・・・月が赤いんだな・・・」



含み笑いをしながら呟く父親の言葉を聞いた優駿は、暫らく静止したものの何も言わずにそのまま外に出ていき、扉を閉めた・・・

すっかり暁から闇色になった空で輝く月は、赤く・・・妖しかった・・・





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04'13(Thu) 悲恋歌④―1
予告していた通り、第4廻は折檻暴行ネタがついてくる予定です。
申し訳ありませんが苦手な方は閲覧を控えてください。






―――優駿様、今宵の月はなんだか大きくて・・・赤く輝いていますのね・・・

―――・・・あぁ、本当だ。

―――・・・昨日は普通の満月でしたのに・・・どうして・・・??

―――・・・??

―――昨日の月は綺麗でしたのに・・・

―――・・・今日の月は綺麗じゃないの・・・?

―――・・・なんだか嫌なんです・・・赤い月・・・


    
   なんだか・・・その赤が狂気に満ちているように見えて・・・
   嫌な事が起こりそうだから・・・



「椿ー、入っていいかしら??」

襖の向こうから聞き慣れた者の声が聞こえ、澪夜は自分が手にしている本から視線を外し、襖の方へと振り向く。

「はいー、どうぞ。」

澪夜は襖に向かって声を上げると、襖が自動的に開かれた。
襖の向こうから出てきたのは御苑だった。

御苑は澪夜の部屋の畳に足を踏み入れると、開けた襖を静かに閉めて本を静かに読んでいた澪夜の方に寄って行く。

「・・・ねぇ、”薬”、貰っていい・・・??」

御苑は本を読んでいる澪夜に、顔の前でパンッと音を立てて手を合わす。

「・・・ええ、いいですよ・・・??」

澪夜は御苑に笑顔を向けると、御苑は有難う、と彼女に一言言うと部屋の隅にある小さな鏡台の前まで移動して、小さな鏡台の小さな引き出しを引く。

「・・・またお客さんが来たんですか・・・??」

「うん、そうなのよー、でもこれって時に切らしちゃってたから参ったわよ・・・ホント・・・」

御苑は苦笑いを漏らしながら小さな引き出しの中に視線を落とす。
彼女が引いた小さな引き出しには赤い包み紙が埋め尽くされていた。

御苑は赤い包み紙の膨大な量に瞳を真ん丸とさせる。

「・・・へぇ・・・こんなに余ってるんだ・・・」

「ええ・・・」

御苑の言葉に澪夜は小さく相槌を打つ。
そんな彼女に御苑は眉を顰める。

「・・・あぁ、そうよね。最近はこんな薬使わなくてもいいもんね、椿は・・・」

御苑は悪付くようにそう言ういながら引き出しの中から3つほど赤い包み紙を手に取る。


御苑が手に取っているこの赤い包み紙は避妊薬だった。

男に身体を売って生活するここの遊郭にいる遊女なら誰でも持っている。
間違っても商売最中に男の子供を身籠らないためだ。

遊女も女だ。

愛してもいない男に身体を売る事も仕方なしというのに、愛してはいない男の子供を身籠る事はこの上ない屈辱だ。
それにそうなるとしたら商売にも師匠をきたし兼ねないのだ。

しかし極稀にだが、この薬を飲んでいようとも妊娠してしまう遊女が出てきたりもする。
だが、この薬を飲まないには限らない。
だから遊女はいざ本番という時に必ずと言っていいほどこの薬を飲むのだ。

それが大量に余っているという事は、その薬を使う必要がなく、使っていないという事だ。

「・・・優駿君って人でしょう・・・??」

御苑の口から出てきた人物の名前に毒付かれたようにハッと驚きの表情を見せた。

「やっぱりあの少年の存在なんだねー・・・」

「・・・」

御苑の言葉に澪夜はすっかり黙り込んでしまう。

”澪夜が宮嬢優駿のお気に入りらしい”という噂が遊女の間で広まり始めると、彼女の身体を求めてくる男の数が急激に減ってしまった。

いや、「いなくなった」と言ってもいいくらいだ。

優駿と言えば華族の中でも地位の高い宮嬢家の若き跡取り息子だ。
宮嬢の名はそれほど高価なもの。
きっと身分の高い優駿の存在が、澪夜から悪い虫共を完全に払ってしまっているのだろう。

そのため自分の身体を求めてくる男がいなくなってきた。
だから澪夜にはその薬は必要なかった。

どっちにしろ、そっちの方が澪夜にも優駿にとっても都合が良いのには変わりないことだ。

「優駿君との時はこれは使わないんですか・・・」

「・・・」

御苑の言葉に今度は無言を通さずに澪夜はこくりと小さく頷く。

「・・・愛している人には・・・それは使いません・・・」

そう言う澪夜の瞳は真剣だった。
その言葉と瞳に御苑は不敵のような笑みを小さく漏らした。

「そっかぁ・・・あくまでもあの少年といる時は”遊女の椿”じゃないんだ・・・」

御苑は鋭い視線で澪夜を見つめた。
しかしその鋭さもすぐになくなり、いつものような柔らかい瞳に戻る。

「まぁ・・・前々から分かってた事だから今更咎めるつもりはないよ・・・椿が決めた事だし・・・」

御苑はそう言うと澪夜の頭をポンッと軽く叩く。

「・・・でもね・・・私達はあくまでも遊女なんだよ・・・??他の人間とは明らかに違う。身体を売っている汚い女だ。
だから、後からたくさん傷ついて哀しい想いをすることがあること、覚悟してその人の事を精一杯愛しなさい・・・??」

そう告げる御苑の瞳はあまりにも強くて、真剣で、どこか哀しかった・・・

そんな御苑の瞳に魅せられてしまったかのように澪夜は食い入るように見る。

「まぁ・・・そういう事、じゃぁ薬有難うね・・・」

御苑は澪夜に笑顔を振りまき、手を振ってこの部屋からあっけなくなっていってしまった。


再び部屋に1人になった澪夜は未だにあの御苑の瞳を忘れられずにはいられなかった。
強くて、真剣で、どこか哀しかったあの瞳・・・

澪夜に言いながらも自分に言い聞かせているようなあの言葉・・・

澪夜は御苑がどういう体験をしたことなど知りもしなかった。
御苑が、一樹に密かに好意を寄せ、彼の子供を身籠ったが堕胎してしまったこと・・・など知りもしなかったのだ。

だからこそ、御苑がどういう気持ちになってあの言葉を澪夜に言ったのかも分からなかった。

ただ、彼女が辛い経験をしたことだけは察した。

「・・・なんだ、暗そうだな・・・」」

御苑の気持ちを考え、本も読まずに暫らくの間無言になってしまっていた澪夜の耳に誰かの声が入ってきた。

彼女は声のする方に振り向く。
そこには、着物を着た長身の端麗な男が襖に凭れ掛かっていた。

「・・・西園寺さん・・・」

澪夜はその男を見るなりはっと息を飲む。
男―西園寺は澪夜の驚いた顔を見るなり一瞬の間だけ小さく笑みを零した。

澪夜と西園寺は互いに見つめ合うような形になっていたものの、澪夜が西園寺を見る視線には”嫌悪”そのものが孕まれていた。

「・・・何しに来たんですか・・・??」

「・・・俺がココにくる理由は1つしかないだろう・・・」

西園寺は澪夜の驚いた表情を見るなりゆっくりと微笑む。

その微笑みからは優しさなどは感じられず、冷たさが纏われている。


澪夜はその冷酷な微笑みに気のせいか背筋が凍りつき鳥肌が全身に立つような感覚に襲われる。

いや、気のせいなんかではなかった・・・

「・・・今日も俺を楽しませてくれよ・・・??」

西園寺はそう言うと未だに澪夜に微笑みを見せていた。


―――とても冷酷で・・・少し楽しげなその瞳には、ただ自分を嫌悪の視線を向ける澪夜しか映しだされていなかった・・・





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04'08(Sat) 悲恋歌③―7
「・・・さぁ、一樹兄さんにも用はなくなったことですし、私・・・女学院に行ってきます・・・」

「え・・・今から・・・??
っていうか終わったんじゃ・・・??」

「ふふっ、そんな事言いましたっけ・・・??」

佐和子の高笑いに一樹の表情が少しだけ引き攣る。

「それにこんな時間に終わるわけないでしょう・・・一樹兄さんも単純ですね。」

「いや、俺女学院に通ってたわけじゃないし・・・」

「まぁ、ごきげんよう。」

佐和子は一樹と別れてから、行く気もなかったはずの女学院へと足を向けた。

女学院が言うほど嫌いなわけではない。

しかし偶に行く気が失せてしまうのだ。
ただ本を眺めてるだけ眺めて、皆の教師というだけで高を括っている女の授業を受けるのが元々大人しくない彼女の性に合わないのだ。

しかし、女友達との交流は彼女にとっては気分がいいものだった。

女学院というものはこの時代、身分の位の高い少女達が大半を占めており、平民にとっては憧れの未知なる地だった。

身分の高いもの同士話は合うし、
佐和子が教室の中で1番華族としての地位が高いと言うだけでチヤホヤとされる。

それに佐和子には宮嬢優駿という女子から人気が高い17歳になる少年の婚約者がいる。

優駿は、稀に見れないほど最高に容姿端麗、性格も優しくて、知力も良く華族としても身分が気高く有数の最高財力を誇っている彼は華族の仲でもかなりの注目を浴びている。

彼女自身も優駿に想いを寄せていた。
彼との婚約は親同士で決めた政略的なもの同然ながらも彼女は幸せだった。

優駿が18歳になれば自分は優駿に嫁いでゆくことになる。
それまであと僅か、1年ちょっと・・・というところだ。

彼が未来の自分の夫だと思うと今からでも楽しみで堪らない。

佐和子はその事が1番鼻が高かった。



しかし、彼女は愛おしい優駿のことで自分自身を憎悪に満ちた鬼人と化してしまう・・・


女学院も終わり、気になっていた疑惑の優駿に自分以外の他の女がいるかどうかを晴らすため、優駿の家に赴こうと向かっていたのだ。

優駿の家路までの途中の桜並木の路にさしかかろうとした時だった。

2人の男女が随分前で桜を眺めていた。

「・・・あれ・・・??」

佐和子は目の前で仲睦ましい男女に苛立ちを覚えるも暫らく見ていて、違和感を感じ始める。

男の方をどこかで見たことがあるような気がしてならなかった。

彼女は自分が感じる違和感を清々とさせるため、暫らく男女の様子を見ることにした。

―――しかし、今考えればこの考えがいけなかったのかもしれない・・・

男の方が女に顔に振り向く。


その刹那、佐和子は確信づいてしまったのだった・・・

「・・・優駿さん・・・??」

佐和子はまさかと思い瞼を擦るも、男は優駿という事実に何等変わりなかった。

優駿が女に微笑んでいる・・・

自分が今までに見たことないような彼の優しげな表情を優駿は自分が知りもしない女に向けている・・・そう思うと彼女は心に大きな蟠りが渦を巻いて大きくなっていく。

しかも優駿が女の神を撫で始めた・・・

この時、佐和子の心には優駿の横にいる女に対して嫉妬心が芽生え始める。
あの2人を見つめ続ける度、大きなものになっていく・・・佐和子はそう感じた。

そして、次の瞬間・・・

彼女は大きな衝撃を受ける。


優駿から、その女に口付けをしたのだ。


「・・・う・・・嘘・・・!?」

目の当たりにした光景に佐和子の顔色は青ざめ、身体が震えだす。

湧きあがってくる感情は優駿に裏切られたという哀しみではなく、憎しみ・・・怒り・・・嫌悪・・・
その感情で身体がガタガタと音を立てて震えだす。

優駿との口付けを終えた女は、優駿に幸せそうな微笑みを浮かべ、彼に寄り添う。


――ポタッ

大きな音を立てて、瞳から一筋に涙が零れ落ちた。

あの2人の関係をはっきりと勘付いた佐和子の心には憎悪と、狂気と悔しさを煮えたぎらせていた。

「・・・許さない・・・絶対許さないんだから・・・!!」

佐和子はそんな感情を込めて2人を睨みつけるように見つめていた。


2人に対しての憎しみの感情が彼女の限界を通り越してしまったのだろうか・・・

彼女は狂ったように・・・壊れたように笑い出したのだった・・・

その壊れた笑い声は彼女の憎しみの感情を更に膨れ上がらせ、鬼人へと豹変させてしまったのかもしれない。

――既にこの頃から・・・

そうやって、幸せだったはずのあの2人の運命を変えてしまったのかもしれない・・・




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04'08(Sat) 悲恋歌③―6
「見てください優駿様。桜・・・」

桜の花びらが鮮やかに色付いている並木道に澪夜と優駿2人だけがそこにいた。

すっかり桜に見初められてしまっている澪夜を優駿が微笑みかける。

「桜が咲いてるのが・・・そんなに嬉しい・・・??」

そう声を掛けられた澪夜は彼の方へと振り向く。
優駿は未だに澪夜に優しく微笑みかける。

優駿の問いかけに澪夜はこくりと小さく頷く。

「だって・・・こんなに綺麗に花をつけて、人をこんなにも魅せるなんて素敵と思いません??」

澪夜の言葉にああ、と優駿は軽く相槌を打って桜を見つめる。

すると風も吹いていないのに1枚の花びらが枝から離れ、地へと舞堕ちてゆく。

優駿はその花びらを視線で追っていくと、最終的には道に溢れんばかりに舞い散った桜の花びらが瞳に入ってくる。

ふ、と桜の木を見上げて間近でよく見れば、大分桜の花びらが散っているのが分かる。

「・・・でも・・・いくら人を魅せているとしても魅せる時間はあまりにも短い・・・」

桜の木を見つめながら優駿が小さく呟く。
その言葉は小さく呟かれたとしても澪夜の耳を掠める。

「・・・そうですね・・・」

優駿の横で切なげな表情を帯びた澪夜もぽつりと呟く。
澪夜はその表情のまま優駿と同じように桜を見つめていた。

「・・・あ・・・」

澪夜が小さく声を上げる。

桜の花びらは何の音沙汰もなしに1枚・・・2枚・・・3枚・・・とどんどん散っている。


――澪夜はこんな寂しげな表情で桜を見つめて一体何を想っているのだろうか・・・

優駿は桜を未だに切なげに見つめる澪夜の横顔を見つめながらそう思う。

「・・・でも・・・だからこそ・・・綺麗に色付いてゆんじゃないでしょうか??」

澪夜はそう言うと切ない表情とは打って変わって笑顔を優駿に向ける。

更に澪夜はこう問いかけた。

桜の花びらはほんの僅かな時間しか咲いていない・・・
けど、魅せる時間が短いからこそ儚いのであり、人々の心に綺麗に映るんじゃないか・・・

「・・・そうかもしれないな・・・」

優駿は自分に微笑みかけている澪夜と儚く美しく散っている桜に自然と心が和らいでゆく。

そして2人は互いに微笑み合うと散り行く桜を暫らく眺め続けていた。




「・・・じゃぁ、澪夜ここまででいいよ・・・」

「え・・・私もっと・・・」

「いや、気持ちは有り難いんだけど、君はこれから1人で遊郭に戻らなきゃいけない・・・それに遊郭街は餓えた男達が居るから危険だ・・・だから一刻も早く戻った方が安全だよ・・・??」

「でも・・・っ」

「それに送り迎えは”これから先ずっとできる”だろう・・・??」

――これからも先・・・
つまりはこれからもずっと一緒・・・

その言葉はささやかな優駿のアプローチかもしれない。

優駿の言葉に澪夜も渋々と頷く。
彼女の頷きを見た優駿は澪夜を子供を褒めるようにして優しく頭を撫でる。

「・・・優駿様・・・」

素直に優駿に頭を撫でられていた澪夜が顔を上げる。
顔を上げた澪夜の表情は少し不安の色が伺えた。

「・・・この先も・・・一緒にこの道歩いていけますよね・・・??」


時々不安になれる・・・
この人の側にいれるだけで幸せを感じられる。
だけどその幸せがあまりにも大きすぎて、心のそこで脅えている自分が、いる。

この人を失ったらどうなるんだろう・・・
そんな事を考えたらその幸せが見えない底知れぬ恐怖へと化してしまう。


「・・・いけますよね・・・??」

繰り返すように訪ねてくる澪夜に優駿は驚きの表情を現すもすぐに解れて微笑みに変わっていく。

そしてそのまま澪夜の唇に口付けた。

優駿の突然の接吻に澪夜は瞳を大きくさせる。

「・・・きっと・・・いや、絶対歩いていけるよ・・・」

優駿はそう言うと澪夜の色素が薄い髪を撫でる。
彼の表情と言葉でさっきの不安は去って行ったのか、澪夜は頬を赤く染めながら幸せそうに微笑んだ。


桜並木の道、桜の花びらが舞い散る中で2人の男女が仲睦ましく寄り沿い合いながら桜を眺めていた。


そんな2人を、1人の少女が遠方の方から食い入るように見つめていた。

少女が2人に向ける視線には、憎悪と、狂気と燃え盛る炎のように孕まれていた・・・

しかし2人はこの視線には全く気付くわけもなく、今ある幸せを感じていた。


この先に起こる信じがたい運命が確実に、音を立てて忍び寄っている事さえも気付かないでいた・・・




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04'08(Sat) 悲恋歌③―5
「・・・優駿様・・・」

優駿は耳元で囁かれた甘い声に重たい瞼を開いていく。
未だにはっきりとしない意識の中で自分の視界に広がる光景を見つめる。

暫らくしてから少し意識がはっきりしてきたのか、優駿はある異変に気付く。

さっきまで自分の隣で寄り添って眠っていたはずの澪夜がいなかった。
彼女を抱きしめ、互いの体温の心地良さを感じながら体力の使いすぎからくる気樽さと疲れから解放されるように眠りに付いたはずなのに・・・

優駿は顔をキョロキョロさせてあたりを見わたす。
すると自分の耳元の近くで小さな笑みが零れたのを耳にした彼は、その方向へと視線を移す。

そこには口元に手をあてて笑みを零している澪夜がいた。
彼女は一糸迷わぬ姿のまま布団にいる優駿とは違い、きちんと着物を纏っていた。

「優駿様、おはよう御座います・・・」

あくまで寝起きの優駿はしばらくボーとした表情で小さく笑みを零している澪夜の顔を暫らくじっと見つめる。

「あら、まだ寝惚けていらっしゃいますの??」

「・・・澪夜・・・??」

優駿はやっとちゃんとした意識を取り戻したのか、瞳の前の澪夜にぱっちりした瞳を丸くさせる。
そんな彼に未だに笑みを浮かべる澪夜。

「改めておはよう御座います。」

澪夜は笑顔を含みながら寝起きの優駿にそう言うと、きちんと畳まれた優駿が着ていた洋服を差し出す。

すると畳んだ洋服の上においてあった優駿の赤いネクタイがスルリと澪夜の腕を掠めて落ちていく。
あ、と声を上げネクタイに手を伸ばす澪夜だが、それを受け止めたのは優駿だった。

小さく謝る澪夜に微笑みながら彼女に差し出された洋服を受け取ると、素早くそれを纏いだした。



「あ・・・お待ち下さい。」

あっ、という間にあとネクタイを結めば・・・というところまで自分の洋服を着用した優駿を澪夜が呼び止めてしまう。
澪夜に呼び止められた優駿は頭に?を浮かべた表情で彼女を見る。

「・・・それ・・・お貸しくださいませ・・・」

「それって・・・このネクタイ・・・??」

優駿の言葉に澪夜は首を縦に振って頷く。

「・・・え・・・でもこれをどうするんだい・・・??」

「実はずっと結びたいと思っていたんです。」

「・・・君もなんだか物好きなもんだね・・・」

そう言って微妙な苦笑する優駿は自分が持っていたネクタイを微笑みを絶やさず見せる澪夜に渡す。

優駿からネクタイを差渡された澪夜は満面の笑みを見せる。
遊女として男をとことん知り尽くし、外見が普通の少女よりも熟されて大人びいていようとも澪夜は何等変わらない16歳の少女だ。
無邪気に見せるその笑みはまるで幼い子供のような愛らしさがあり、優駿はそんな1面を見せる彼女に少しながらも胸がときめいてしまった。

彼はそんな自分に思わず赤面する。
澪夜は頬を真っ赤にしている優駿の顔を不思議そうに見つめる。

「・・・優駿様・・・??」

「あ・・・いや、なんでもないんだ。」

優駿はそう言い、自分の顔を真剣に覗きこんでくる彼女から視線を逸らす。
澪夜はそんな優駿に顔を顰めながらも彼にネクタイを結んでやろうと、カッターシャツの襟に赤いネクタイを通していく。

そこまではよかったのだが、ネクタイを結ぶとなると手古摺ってしまう。

澪夜はなかなか結べないネクタイに真剣な顔つきになってゆく。

「・・・澪夜・・・」

「・・・はい・・・??」

「結べないんだったら無理してしなくてもいいんだよ・・・??」

優駿のその言葉に澪夜の返答はなかった。
ただ、むずべないネクタイと睨めっこしていて。

結局優駿は真剣にネクタイを結ぼうと頑張っている彼女に付き合うことになった。




澪夜がネクタイを結ぼうと頑張ってからどれくらい時間が経ったのだろうか・・・
流石の優駿も体勢を保つのが辛くなってきた。

「・・・澪――・・・」

「ふぅ・・・できた・・・!!」

彼女を呼び止めようとした刹那、彼女から満足げな声が上がる。

「はい、優駿様お待たせしました。」

ちゃんとできましたわよ。そう言う彼女の笑顔を見て、手探りでネクタイが結ばれたのか確かめる。

どうやら彼女はネクタイ奮闘の末に勝ったらしい。

「・・・有難う」

優駿は微笑みながらそう言うと澪夜も優駿に微笑み返す。

「それにしてもあれですわね・・・米利堅(今のアメリカ)の服の仕組みは難しいですのね。」

澪夜は優駿の纏っている洋服を嘗め回すように見つめる。

「僕は・・・父が明治の時代に入ってからはこういう洋服しか着ないから、僕も着ているだけで・・・慣れればそうでもないけど??」

「私は最近着物しか着ないので余計にそう思うだけなのかもしれませんが・・・」

「僕は洋服よりも着物のほうが大変だと思うけどね。」

優駿はそう言うと澪夜に微笑んだ。

「・・・じゃぁ今日はこの辺で帰るとするよ・・・」

「あ・・・じゃぁ私途中まで送り出しますわ。」

澪夜は部屋の襖を開けた優駿の隣まで歩み寄って行く。

「え・・・店から出ても大丈夫・・・??」

「たまにはいいと思います・・・それに他の遊女の方々は普通に店を出入りしているのに私だけいけないって訳じゃないですのよ??」

そう言われたらそうか、と優駿は少し苦笑する。

「・・・それに私、1度で宜しいから優駿様と外を散歩してみたかったのです・・・」

澪夜はそう言うと優駿の肩に頭を預ける。

「・・・1度じゃなくたってこれからもしていけばいいんじゃないかな・・・??」

優駿はそう言いながら自分に寄りかかっている澪夜に微笑みかける。



―――・・・1度じゃなくたってこれからもしていけばいいんじゃないかな・・・??

その言葉が澪夜のなかで優しく響いて、彼女にとって心地良かった。




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04'07(Fri) 悲恋歌③―4
性的描写があります故、苦手な方は閲覧を控えてください。
それでも大丈夫という方だけ自己責任で反転お願いします(*´∀`*)

「・・・っ、あぁあ」

澪夜の甲高い喘ぎ声が流れる空気を伝わって部屋全体に響き渡る。

その大きな一声の後、彼女は力尽きたかのように今まで優駿に覆い被さっていた身体のバランスを崩し、彼の上に倒れこんでしまう。

優駿は体力の弱った澪夜の肩を掴んで、顔を覗き込む。

彼女の顔は今までのお互いの愛を確かめる行為のせいか、息が上がって、頬を赤色に染めた艶っぽい表情をしていた。

そんな彼女の表情を見た優駿は笑みを小さく漏らす。

彼の漏れた笑みに澪夜は荒れた息を整えながら少しながら顔を顰めた。

「・・・何・・・笑って、るんですか・・・??」

「いや・・・よく頑張ったなぁ・・・と思いまして・・・」

優駿の一言に澪夜はムッと眉を強張らせる。
その表情を見た優駿はまずいと言わんばかりの顔を見せる。

「・・・簡単にへばってしまった私を笑っていらっしゃるのですか・・・??」

「いや・・・そういうわけじゃないんだけど・・・」

優駿は困ったように微笑みながら澪夜の髪を掻き分けるように彼女の頭を撫でてやる。


今まで何度愛し合ったか分からない。
数え切れないくらい互いを深め合ったのかもしれない。

お互い尽きるまで頑張ってきたんだ、しかし人間の体力の限界には個人差があるものだ・・・

澪夜にとっては今がそれであって、まだまだ余裕な顔つきをしている優駿はそれがまだまだ先なのかも知れない。


「・・・そうなんでうよね・・・??」

「いや・・・違うよ??」

「・・・嘘でしょう・・・??」

「嘘じゃないよ??」

暫らく沈黙が続いた。

澪夜は優駿を弱冠睨むように見つめ、優駿は微笑むようにして澪夜を見つめていた。

すると優駿に覆い被さっている形の澪夜の汗が、彼女の額から彼の右頬に零れ落ちて行く。

澪夜の汗がほんの微かな小さな音を立てて優駿の右頬に落ちた瞬間、彼は反射的に右目だけを瞑ってしまう。

すると、優駿に覆い被さっている澪夜の方が少しずつ震えだす。

何事かと思い彼は澪夜?と一言声をかけて再び彼女の顔を恐る恐る覗きこむ。
しかし前髪が邪魔でよく表情が見えない・・・
優駿は彼女の前髪を指でわけてみる。

そうやって澪夜の顔を覗きこんだ優駿は心配そうな表情から何が起こったのか理解できていない子供にも似た唖然とした表情に変わる。

優駿が見た澪夜は・・・可笑しそうに小さく笑みを零していた。

唖然とした優駿の表情を見た彼女は満面の笑みを浮かべると、声を出して笑いながら勢いよく彼に抱きつく。

突然の澪夜の抱擁で優駿は思わず身体をビクつかせてしまう。
相変らずの澪夜は優駿の肩口に顔を埋めて未だに声を出して笑っていた。

「・・・澪夜・・・」

「アハハッ・・・優駿様の表情、面白かったです・・・」

澪夜はそう言うと笑いを堪えるようにして笑う。
優駿はそんな澪夜の笑い方に少しムスッとした表情をする。

この2人、さっきとはまるで表情が逆転してしまった。

「・・・いきなり肩震えだすから泣いてるのかと思った・・・」

「え・・!?」

「・・・そう思ったら俺の頬に落ちてきたのも涙だと思った・・・」

「フフッ、そんな硬い表情をさせると折角の綺麗な顔が台無しですわ・・・」

澪夜は優駿の眉間に寄っているシワを人差し指で突く。
しかし優駿の眉間にはシワが寄っているままだった。

「・・・こんな表情にさせたのは君じゃないですか??」

「・・・あら、それを言うなら私を笑わせたのも優駿様ですわ・・・」

「・・・なんで・・・??」

「私を笑って今の優駿様と同じ表情にさせた優駿様に小さな復讐ですわ・・・ッきゃっ・・・!!」

澪夜が妖しく微笑みながら優駿に微笑んでいると、優駿は身体を反転させて今度は自分が澪夜に覆い被さる形になる。

「・・・優駿・・・様・・・??」

「じゃぁ僕も、澪夜に小さな復讐・・・」

優駿はそう言うと悪魔のごとく意地悪そうに微笑む。

「優駿様もまだまだ元気ですのね・・・」

澪夜も悪魔のように意地悪そうに微笑む優駿に笑顔を見せる。
見間違いだろうか・・・少しながらその笑顔が引き攣って見える。

「澪夜ばっかり上だと澪夜の方が体力の消耗が早いだろうから今からは俺が上になってあげるよ・・・」

「あら・・・優駿様はお気遣いがきくお優しい方なのですね。」

「・・・こういう時ばかりは優しくできないけどね・・・」

優駿はそう言うと澪夜の太腿に手を忍ばせていく。
澪夜は優駿の手の感触に頬を赤く染めながら身体をビクつかせる。

身体はもう熱くなったはずなのに

幾度も喘がされたはずなのに

何度も何度も優駿を感じたはずなのに

数え切れないほどに互いを貪りあうようにして深く繋がったはずなのに

しかし愛する者とは飽きるほどに何度も愛し合いたいと思うのは人間の本能なのか・・・
それとも2人の愛が深すぎるからだろうか・・・




澪夜の身体は再び優駿を求めて疼きだした・・・





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04'03(Mon) 悲恋歌③―3
性的描写があります故、苦手な方は閲覧を控えてください。
それでも大丈夫という方だけ自己責任で反転お願いします(*´∀`*)


甘い口付けの余韻に浸った2人は互いに見詰め合う。
すると澪夜の頬がみるみるうちに赤くなり始める。

「・・・あ・・・申し訳ありませんっ・・・」

澪夜は熱った頬を掌で隠すと、赤くなった自分の顔を優駿に見せるのが恥ずかしいのか、優駿から視線を逸らして後ろを向いてしまう。

接吻だけで赤くなった澪夜が可愛らしかったのか、
そんな彼女を見て優駿は笑みを漏らし始める。

「どうしてそんなに恥じるんだ・・・初めて交わすわけでもないのに・・・」

「・・・優駿様がそんなに見つめるから・・・なんか恥じらいが芽生えてきて・・・」

澪夜は後ろを向きながらも、瞳だけ優駿の方を向かせる。

「・・・僕のせいですか・・・??」

優駿がそう問いかけると澪夜はこくりとゆっくり頷く。

「優駿様が・・・私の心の中に入ってくるせいです・・・」

澪夜はそう言うと更に頬を赤色に染める。
優駿といると、男と戯れる商売で忘れていた初々しい幼い心というのが再び芽生えだす。

あと5年もないうちに成人しようという年齢ながらだが、彼女の気は悪くはなかった。

その言葉を聞いた優駿はゆっくりと微笑むと、澪夜を後ろから抱きしめる。

優駿に後ろから抱きつかれた澪夜は突然の事に身体をビクつかせてしまう。
そんな澪夜を気遣ってか、優駿は澪夜を抱きしめている腕の力を少し緩める。

「・・・ごめん・・・つい・・・」

優駿は澪夜に軽く謝るも、彼女の反応はなかった。

怒っているのか・・・そう思い優駿が彼女を解放しようとすると、澪夜が自分を抱きしめる優駿の腕に手をそっと添える。

「・・・暖かい・・・」

彼女の表情は見えないものの、幸せそうだった。

「さっき・・・耳打ちして言いましたよね・・・”このまま、ゆっくりとたくさん愛し合いましょうね・・・これからもずっと・・・ ”って・・・」

優駿は彼女の言葉に嗚呼と相槌を打って頷く。

「だから・・・たくさん私に触れてください・・・たくさん私を愛してくださいね・・・??」

澪夜はそう呟くと優駿の腕をきゅっと握る。
優駿の腕から澪夜の熱い体温が伝わってくる。

遊女という職業柄、つい男に身体を求めてしまうのは彼女の性だ・・・
それだからこそ、他の人間から汚らしいと白い瞳で見られ罵られてしまう。

男と女は、互いを曝け出して体温を体感じながら愛し合うのが1番の愛情表現だということを叩き込まれた彼女はいつも優駿を誘うような言葉を言ってしまう。

優駿も優駿でそんな彼女が愛らしいとさえ思ってしまう。

「・・・澪夜・・・」

「・・・あっ・・・」

優駿はそう呟くと後ろから澪夜の首筋に軽く口付けると、澪夜は小さく声を漏らす。

優駿はそんな澪夜の反応が面白がって、彼女の白くて細い首筋にたくさんの赤い刻印を刻み付けていく。

時には彼女の長い髪をかき上げて、耳の後ろを器用に舌で濡らしていく。

そんな彼に澪夜は鳴かされっぱなしだった。

「ぁん・・・優駿さ・・・」

首筋を集中的に攻撃してくる優駿に喘がされて、澪夜は次々と芽生えてくる快楽に少しでも絶えようと、部屋の畳に爪を立てる。

澪夜の爪が立った跡を見た優駿は畳に爪を立て続けている澪夜の手を掴みとる。

「・・・畳に爪立てたらいけないんじゃないんですか??」

「ぁあ・・・っ」

優駿は紳士的な言葉を澪夜の耳元でそっと囁く。
快楽のせいで感度が最高潮に良くなっている彼女は耳元で囁かれただけでも喘いでしまう。

優駿はまだ始まったばっかなのに・・・と少し可笑しそうに微笑む。

「・・・っ・・・!!」

澪夜は彼の指が肌蹴けかけてきていた着物の間から割り込んで自分のなかに入り掻き乱すのを感じると、喘ぐ声詰まらせてしまう。

暫らく優駿のされるがままにされていた澪夜の太腿には愛液が伝って流れており、小刻みに震えていた。

「んふぅ・・・も・・・っ、ダメ・・・」

「もう・・・??」

澪夜が息を荒げながらそう呟くと優駿は意地悪そうに微笑みながら彼女のなかから指を抜く。
案の定、彼の指は澪夜の愛液で濡れていた。

「・・・ゆ・・・う駿・・・さ・・・」

澪夜はそう呟くと、今まで彼に背中を向けていたのだがクルッと体制を変えて向き直り、彼を見つめる。

彼の愛撫を一杯に受けていた彼女の頬は大分赤らめていた。

優駿と向き合った澪夜は、未だ残る快楽のせいで力が入らない手で弱々しく彼の両肩を掴むと、彼を畳の上に押し倒す。

「・・・どういうつもり・・・??」

あくまでも冷静な優駿は自分の愛撫を受けて快楽に浸っている澪夜を見て不敵に微笑む。

「・・・っ仕返しです・・・」

澪夜はそう言うと優駿の赤いネクタイを少し緩めると彼に深く口付けた。


互いの濡れた舌が口内で交錯する淫らな音しか今の2人の耳に入ってこなかった。






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03'18(Sat) 悲恋歌③―2
「ねぇ、優駿様。」

椿の花の薫りが鼻を心地良く擽る部屋で澪夜と優駿が向かい合うように座っている。

澪夜が瞳を輝かせながら優駿の見つめる。

「・・・なんだい??」

優駿は自分を見つめる澪夜に少し顔を赤らめながらも彼女ににっこりと優しく微笑む。

「実はこれ・・・」

澪夜はそう言うと自分の後ろからそっと1冊の本を取り出すと、優駿にそれを差し出す。

優駿は澪夜からそれを受け取ると瞳を細めて真っ白な表紙をジィと見つめる。

「・・・”ゐつかの桜”・・・??」

優駿は真っ白の表紙の真ん中に書かれている筆を見て、それを読み上げる。
澪夜は優駿がそれを読み上げるとコクリと2回ほど頷く。

「ええ・・・その本今大変評判がいい小説なんですよ・・・??」

澪夜の言葉に優駿はへぇ・・・と一声上げ、本を開き内容(なか)を読み始める。

「物語は、奴隷として財閥の家に買われた少女とその財閥の息子の青年の恋を描いていますの・・・」

澪夜の言葉に応答もせずに優駿は更に本に瞳を通していく。
本に熱心になってしまっている優駿を見た澪夜はクスリと笑みを漏らす。

「奴隷と財閥の子息の恋・・・だけど2人はあまりにも身分が違いすぎる・・・
決して許される恋ではないのですが、周囲に反対されるほど2人の愛は燃え上がるんです。」

本に熱心になってしまっている優駿に澪夜はその本の内容を熱心に優駿に語る。

「・・・その本を読んでいくうちに、何故か私・・・そのお二方に強い共感を抱いてしまいましたの・・・」

今まで本にばっかり瞳を向けていた優駿だが、その言葉を聞くと顔を上げ、澪夜を見つめる。
優駿に見つめられた澪夜は再び優駿に笑顔を見せる。

美人には涙がよく似合う。と聞くが、笑顔の方がよく魅力的に見える・・・
澪夜の笑顔を見た優駿はそう思ったに違いない。

「まるで・・・その2人の恋が・・・私達みたいで・・・」

澪夜はそう言うとふいに少し頬を赤く染めて幸せに満ちた表情を見せる。
そんな澪夜を見て何を思ったのか、優駿は満面の笑みを浮かべる。

「・・・そうか・・・それはいい作品を見つけたな・・・」

「えぇ・・・」

優駿はそう言うと澪夜の頭を優しく撫でる。
澪夜も最初は優駿に甘えて頭を撫でてもらっていたのだが、そのうち自分の頭の上にある優駿の手をとると、そのまま自分の頬へと持っていく。

その時の澪夜は満足気に柔らかく微笑んでいた。
優駿はそんな澪夜の微笑みを見つめているうちに胸が締め付けられるようになってくる。

自分の肌を通して感じる優駿の手の温かさが澪夜にとってとても心地良かった。

また澪夜の想いは優駿も同じようなものだった。

澪夜の頬に触れている自分の手から伝わる澪夜の柔らかな肌。
優駿は澪夜の肌に触れたいと心から願う・・・そんな小さな欲望が優駿を動かす。

「・・・澪夜・・・」

優駿は小さく口を動かし”澪夜”と声を出すと、優駿は手に持っていた本を床に置いて、澪夜に触れさせられている彼女の頬をそのまま自分の方へと引き寄せると唇同士を重ねる。

当の澪夜は少し驚いて見せていたものの、優駿との口付けに心が満たされてゆき、心が安らいで行く。

ただ、愛する彼女に触れてみたかった・・・

優駿はその小さな欲望を満たすために澪夜の柔らかな唇に触れ、その感触を堪能する。
澪夜も優駿との口付けに時間を忘れるほどに満ち足りた幸せを感じていた。

「・・・ん・・・」

何度も互いの唇の角度を変え、口付けの合間に澪夜の吐息が漏れる。
離れてはまた触れ合う口付けに澪夜も顔が先程より紅潮されていく。

呼吸し辛くなった澪夜が少し口を開こうとするも、優駿はそれを許さず、また口を塞いでしまう。

「ン・・・ぁ・・・優駿さ・・・」

とにかく酸素が欲しい澪夜は少し唇を離そうとすると、優駿の方から唇が離れていく。
澪夜は想像もしていなかった優駿からの唇の解放に茫然とする。

いや、内心は肩を落とした。

「・・・ゆっ、優駿・・・様??」

「あれ?離してほしかったんだろう??」

優駿はそう言うと床に置いていた本を再び手にとり、読み出す。

「いえ・・・そう言うのじゃなくて・・・その・・・あぅ・・・」

澪夜は顔を真っ赤にしながら顔を俯かせる。
実は、もっと激しいのを求めていた。とも言えずただ顔を赤らめて瞳をキョロキョロさせていた。

「・・・どうしたの・・・?顔、赤いよ??」

優駿が澪を見て、小さく笑う。
澪夜はその言葉に顔を少しムスッとさせる。

「なっ、なんでもありません・・・!!」

「・・・へぇ・・・もっとして欲しかったんじゃないの??」

優駿はそう言うと澪夜に今までに無い笑みを向ける。
それは悪魔が見せるような、魅力的な意地悪な笑み。
そんな笑みでさえ、優駿が端麗に見えるのが澪夜には少し腹立たしかった。

「そっ・・・そんな事ありませんわ!!!」

澪夜はムキになって、頬を膨らませてそっぽ向く。
そんな澪夜を見て優駿が可笑しそうに腹を抱えて笑い出す。
澪夜は大爆笑の優駿を不機嫌そうに横目でチラリと見る。

「・・・何がそんなに可笑しいんですか・・・」

澪夜は優駿を睨みつけるような視線を送る。
優駿は笑いで瞳に溜まった涙を指で拭う。

「いや・・・ごめん・・・澪夜が可愛らしくてつい意地悪をしてしまって・・・」

優駿の言葉に澪夜は頭から湯気が出てきそうなほど顔を赤くさせる。

「・・・かっ、可愛いだなんて・・・私には勿体無いです・・・っ!
あ・・・あれですね!・私の機嫌取りでしょうか!?!」

「いいや、違うよ・・・澪夜はいつでも可愛いよ・・・」

優駿は澪夜の両手に手を添えて、今はかなり赤く染まってしまっている小さな彼女の顔を自分の方に引き寄せて、互いの額を重ね合わせる。

「・・・優駿様はずるいです・・・」

澪夜の言葉に優駿は、ん?と小さく唸る。

「どうして??」

「・・・優駿様は、たくさんの幸せと、満ち溢れた愛情を私なんかに与えてくださるから・・・嬉しくて恥ずかしくて、私の心臓がドキドキ五月蝿くて、このままだと持ちません・・・っ!!」

澪夜はそう言うと自分の胸に手を当てる。

ドクンドクン

優駿に触れられている頬が熱くて・・・
自分の掌から伝わる、心臓が大音量で脈打ってて・・・

「それに・・・優駿様の言う通り、本当はもっともっとして欲しかったんです・・・」

澪夜はそう言うと恥じらいからか、瞳を思いっきり瞑って両手で自分の顔を隠したと思えば無言になってしまう。

そんな子供らしい澪夜を見て、クスッと小さく笑みを零して優駿が小さく微笑む。

「・・・澪夜・・・顔、熱いね・・・」

澪夜と重ねている額から、澪夜の頬に触れている掌から澪夜の体温がそのまま優駿に伝わる。
澪夜が顔を赤らめているのか、伝わる体温は・・・熱かった。

「優駿様が・・・熱くさせたんですよ??」

澪夜の言葉に優駿がまた笑みを零す。

重ねていた額をゆっくりと離すと、澪夜が優駿の耳元で何かを小さく囁き、ゆっくりと彼の耳元から離れるとにっこり微笑む。

彼女に耳元で囁かれた言葉を聞いた優駿も優しく微笑むと、再び互いの唇を重ね合わせた。

―――このまま、ゆっくりとたくさん愛し合いましょうね・・・これからもずっと・・・


2人の間には幸せの時が流れていた――・・・







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03'17(Fri) 悲恋歌③―1
優駿様・・・

私は貴方に愛されてとても幸せでした。

恐れもなにもなかった。

ただ、貴方の側にいられることだけで充分です。


でも・・・

私は気付きませんでした。

幸せの影にはつねに嫉妬がついて離れていなかったこと・・・


* * * * * * *


季節は花びらが美しく咲き乱れている桜の枝の上で鶯が美しい歌声を響かせている暖かい春。

路には桃色の花びらが散っている。


桜の花びらが風にのってひらひらと散っていく中、1人の少女が小さな寺の階段に静かに座っていた。

少女は手に1本の白い花持っており、茎をくるくると回しながら花を見つめる。
少女が手にしている花は茎がしっかりと伸びており凛とした美しく透き通ったような白い花。

手に持っている花を眺めているうちに少女の片足がカタカタと小刻みに震えだす。

そして視界の先にある鳥居を睨みつけるように見つめていた。

何分花を見つめ、足を震えさせたのだろうか、鳥居の門を1人の男がくぐってくる。
その男は古ぼけた寺の階段に自分を睨みつけるように見ている少女を見つけると、笑顔で少女に手を振る。

「遅い!!どんだけ待たせたと思っているのよ!!」

少女は勢いよく笑顔の男に罵声を浴びせる。
男はその勢いのよさに少し驚いて見せるが未だに笑顔は絶やさず。

「ごめんごめん。でも佐和子ちゃんから呼び出し喰らうとはなぁ・・・」

思っても見なかったよ。と男はハハッと笑いながら少女―佐和子の隣へと腰を下す。

「・・・何?私が一樹兄さんを呼び出したら何か可笑しいの??」

「いやっ、そういうわけじゃないけど・・・女学院とか今日ないの??」

一樹は佐和子の姿をまじまじと見る。

髪には朱色のリボン、艶やかな赤の着物にくるぶしまである袴、女学院生のお召し物だ。

「もう終わりました。そんなもの・・・」

「そう・・・まっ、まぁそんなピリピリしないで・・・」

不機嫌に自分を見る佐和子を宥めるように一樹はいろんな言葉を巧みに使って、そうでないことを佐和子に伝える。
しかし佐和子の不機嫌はそんな事で治るわけもなかった。

「ま、そんなことはどうでもいいんです。」

佐和子は一樹から自分が手にしている白い花へと視線を変える。

「うん、で?話って何・・・??」

一樹の言葉に佐和子は花から視線を逸らさずに口を開き始めた。

「ねぇ、優駿さんに・・・他の女いるでしょう??」

佐和子はストレートに一樹に問いかけてきた。
一樹は佐和子の質問に内心驚きつつも、それでも慌てず持ち前の笑顔で否定する。

佐和子の疑問は真実なのだが、ここで否定しておかなければどうなってしまうか分からない。

佐和子の事だ。
またヒステリーを引き起こして暴れまわるに決まっている。
そしてその被害にあうのは確実に自分だ。

一樹はそう考えると冷や汗が額から滲み出すような感覚がして、佐和子の横に腰掛けたことを後悔しはじめる。

「・・・本当・・・?優駿様に変な虫はたかっていないのね??」

「あぁ”俺の知る限り”はね・・・」

「・・・嘘つき・・・」

一樹の言葉の後に紡がれた佐和子の言葉が一樹に重く圧し掛かってくる。

「・・・嘘つき・・・??」

俺が?と一樹は佐和子に尋ねると佐和子は一樹を睨みつける。
さすがの一樹もこの時ばかりは焦りを隠さずにはいられなかった。

「私・・・知ってしまったのよ・・・」

佐和子は花を手に持ちながらも、袴を力強く握る。
自分の袴を握るその手は徐々に震え始める。

「優駿さんの背中に・・・引っ掻き傷があったのよ・・・」

佐和子は怒りを堪えているのか、涙を堪えているのか、唇を噛み締めていた。
佐和子の言葉を聞いた一樹は少し呆れた顔をする。
それは佐和子に向けたものでなく、優駿に向けるべきもの。

「引っ掻き傷なんて・・・女が付けたもんじゃないかもしれないんじゃない??」

一樹は巧な言葉で佐和子の不安を少しでも和ぐようにと佐和子の考えている説をあえて否定する。

「・・・でも・・・」

「まぁ、そうだとしても証拠、ないんでしょう??」

一樹はすっと立ち上がる。
佐和子は立ち上がった一樹を見上げた。

「大丈夫、アイツに女がいたって佐和子ちゃんは優駿の未来のお嫁さんだよ??
きっと優駿もそれを理解してるから佐和子ちゃんが傷つくことは遇えてしないよ。」

一樹はそう言うと座っている佐和子の頭を撫でる。

―――大丈夫
しかし一樹の言葉は偽りで塗り固められた虚偽の言葉だった。

現に優駿は澪夜に恋焦がれ、澪夜もまた優駿が愛おしくて仕方ない。

優駿が今まで佐和子にちゃんと瞳を向けたことなんて1度たりともなかったことは一樹も承知の上だ。
そうだったからこそ、彼が少しでも佐和子以外の女との出会いを、と自分が優駿を遊郭に連れて行ったのだ。

佐和子は子供じゃないから、とまた不機嫌に自分の頭に乗っている一樹の手を払いのけた。

一樹は冗談っぽく佐和子に払い退けられた手を痛そうに擦り、泣き真似をする。

佐和子はそんな一樹に冷たい視線を送る。

「・・・でもさ、もし・・・優駿に”女”がいたらどうする・・・??」

未だに冗談で手を擦っている一樹は不敵な笑みで佐和子に訪ねてみる。

その言葉を聞いた佐和子は一樹の言葉に瞳を大きくして驚いた。
一樹はそんな佐和子の表情を見て、聞いた自分が自分なのだが少し慌てる。

「・・・そうね・・・どうしちゃおうかしら・・・」

佐和子もまた、薄気味悪い笑みを浮かべると、手に持っていた白い花を力握りつぶす。
優駿に女・・・そんな吐き気がしそうなことを考えたら余計に手に力が篭っていく。

「この花のようにしちゃったらどうしよう・・・」

佐和子は握りつぶしてしまった花を見つめて小さく微笑む。
その微笑みは”悪魔”そのものだった・・・

怖いものだね、と一樹は佐和子の笑みを見た一樹は小さく笑う。

―――今の優駿が澪夜を抱いているとしったら、佐和子ちゃんどうするんだろうね・・・

一樹はあえてこの事を口にせずに、悪魔のような笑みを浮かべている佐和子を見つめていた。

佐和子の手の中にある花は、透き通ったような白い花びらがぐちゃぐちゃになりところどころ抜け散ってしまっており、茎の部分が数箇所折れてしまっていた。


佐和子によって潰された花は醜くなり、再び凛々しい美しい姿にはなれない・・・







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